■設計日: 2019-2021年(稼働: 2021-2024年)
■クライアント: 株式会社ロフトワーク
■実施場所: Panasonic Creative Museum AkeruE
■担当内容:
Panasonic Creative Museum AkeruE(2021〜2024年)内のエリアの一つである映像制作スタジオ「PHOTON」の全体監修(全体UX基本設計、機材・什器選定、体験パッケージ設計 など)
ABOUT
PHOTONは、Panasonicが運営するミュージアム「Panasonic Creative Museum AkeruE」(2024年閉館)における、館内の体験エリアの1つである映像制作スタジオ「PHOTON」の1つであり、unworkshopとしてここで行われるUXおよび、そこで体験できる具体コンテンツ設計を行なった。
始まり
AkeruE立ち上げのゾーニング設計の際に映像制作エリアを1区画つくるという素案を元に、空間の体験デザインそのものの在り方から、それを実現するための什器、コンテンツパッケージを設計した。

AkeruEというミュージアム全体の基本コンセプト(左図)として「ふしぎにであう」→「つくってあそぼう」→「つたえてつながる」という循環を各エリアの体験デザイン(UX)において需要な思想として置いているため、PHOTONにおいてもシンプルな「つくって楽しむ」のみならず、作った作品や、作ったあと、どのようにして他者により良い相乗効果を波及させられるかを検討した。
映像制作への敷居をより低く、体験はより深く
AkeruEにおける体験のデザインの条件として、多くの来館者の方がいるため、エリアのキャパシティの関係上、1回の体験時間はなるべく短く済ませる必要があった。また同じ子が何回来ても楽しめる内容を目指したこととした。だが映像制作自体はそこまで短く終わらせることができず、短く終わらせた場合、「体験の深さ」が出ないことも問題として上がった。
・長くても20-30分程度(体験の手軽さ、わかりやすさ)
・何回来ても楽しめる(体験の奥深さ)
の2つの要素を両立させるため、まず4つの席としてのブースを作り、そのブースで体験できる内容を体験者が選べるよう、さらに4つの体験パッケージを制作した。
体験パッケージの内容は検討した結果、下記とした。
❶ストップモーションアニメ: 素材を動かしては静止画を撮り、動かしては撮りを繰り返し、それらをつなげることで、「動かないものが動いてるように見える映像」
❷ズームアウト: モチーフの静止画を1枚撮り、1部分にクローズアップした状態から始まり、だんだんズームアウトしていくことでそのモチーフの正体がわかるクイズ映像。
❸アフレコ: モチーフを動かし、撮影した無音動画に対して、自身でセリフをあてこみ、アフレコをする。
❹スローモーション: 特定のモチーフをスロー映像で撮影し、瞬間の面白さをドラマティックに見せる。
コンテンツとしてはシンプルなものだが、使うモチーフ、コンテ、撮り方、アプリのエフェクトなどで、千差万別のアウトプットとなり、何回でも体験できる深さがでるようになった。
またブース内にはアプリの操作方法およびパッケージの手順を動画で添えた。撮影アプリは都合上、ソフトの独自開発は行わず、市販の動画制作アプリケーションを使うこととした。アプリUIが本来の体験を邪魔してしまうことが危惧されたが、フタを開けてみると慣れてきた子どもたちは、こちらの意図した機能以上のものを独自で覚え、積極的に使う子がとても多く、また市販品のため、このスタジオでの体験をキッカケに、自宅でもDLし、映像制作に目覚めた子も多くいる。(作った作品をクルーに自慢にしくる場面が生まれた)
敷居はより低く、体験はより深く
映像制作を終えたあとの「共有」のフェイズとして、まず作り終えた作品が自動的にスペース壁面の巨大スクリーンに自動的に投影されるようにした。皆の前に投影されるという多少の緊張と、自慢したいという2つの気持ちが合わさり、さながらミニシアターのような、ここでしか味わえない独特な時間が流れる。
また体験の最後に、中央の机に置かれた本の形をした共有スペースに、自身が感じた映像作りのコツを他者に残していくことをレコメンドするようにした。映像作りは20-30分ほどの体験では体得できないさまざまな要素があるが、ここを見ることで他者の学びを得、また自身の振り返りもふまえ、ここで得た教訓残していき、知がたまっていく仕組みとした。