■設計日: 2019年〜2021年(稼働: 2021-2024年)
■クライアント: 株式会社ロフトワーク
■実施場所: Panasonic Creative Museum AkeruE
■担当内容:
・Panasonic Creative Museum AkeruE(2021〜2024年)内の付帯施設であるデジタルファブリケーション工房「TECHNITO」の総合監修(機材選定、空間レイアウト提言など)
・開館後の管理業務全般(工房内コンテンツの企画設計、講師、保守点検、従業員教育など)
ABOUT
TECHNITOは、Panasonicが運営するミュージアム「Panasonic Creative Museum AkeruE」(2024年閉館)における、館内展示設備の保守や、独自のワークショップ、探求プログラムなどを目的としたデジタルファブリケーション工房であり、unworkshopとして監修を行い、開館後の運用まで一貫して行なった。
始まり
ミュージアムであるAkeruEの中におけるTECHNITOの役割は、館内で発生する諸々の制作作業(設備の修復、什器などの制作)のワンストップ化や、別フロアの展示区画で行える体験との棲み分けとして、お客さんに対して、より発展的で、時間軸の違うものづくり体験を提供することにあった。
機材・空間を学びを発生させる装置へ
これまでのワークショップディレクター・図工科教員としての経験から、機材類、レイアウト、設備に対してのアドバイスを行った。
とくに工房の顔ともなりえるデジタルファブリケーション機材類に対しては、「手に届く機材」を目指し、あえて子どもや一般客目線でのUIが採用されている、プロ向けでない家庭用に近い機材類を積極採用を行なった。結果として、ここで行われるアルケミストプログラム*に参加する子どもも追随して同じ3Dプリンターを購入するなど、彼らの実生活に連結する形で、金額的にも、存在としても「手に届く機材」と昇華させることができた。また安価なため、破損した際のメンテナンスも手軽であり、修理過程を子どもに示すことで機構など学びにつなげることもできる。
道具類は、なるべく常に外に出ている状態を目指し、引き出しには入れないよう、壁にフェンスにかけれる専用ジグをレーザーカッターなどで制作し、視覚から想像を促し、より直感的に、迅速にものづくりに移行できるレイアウトを目指した。専用のジグたちは、この工房で生まれ得る「作品サンプル」も兼ねており、新しい収納の在り方を示しつつ、「こんなものが作れるのか」という参考アウトプットの幅も同時に示すことができた。
デジFAB機器と気軽に出会うための恒常コンテンツ開発
デジFAB機器や木工機材などは、高価かつ、危険な一面もある機材なため、一般の方が自由に出入りできる環境にはできない。しかし、一般的な知名度も上がってきた3Dプリンター、レーザーカッターなどのFAB機器を使ってみたいという需要は高いため、気軽にそれらの魅力を体験できるコンテンツ監修を行った。
<TOUCH the TECH>
20分で気軽にFAB機器の要素を体験できる、ミニワークショップシリーズ
❶シャカシャカキーホルダー(クルー共同開発)
小さな端材や素材を入れておくことができるキーホルダーを作るプログラム。捨ててしまう端材や使いづらい小さな素材も、よく見ると面白い形をしていたり、綺麗な色をしている。そんな素材の新たな一面に気づいてもらうために制作し、館内では大人気コンテンツの1つとなった。
❷じぶんスイッチ
今日の自身の気分をピクトグラム1つで表すことができる、ON/OFFスイッチを作るプログラム。ピクトやそれに合う色も自分で設定し、最後組み立てる。
❸AkeruE Graph (クルー開発)
歯車に沿って図形を描くことができる文房具の要素を使った、オリジナル文具をつくるプログラム。歯車に該当する部分をその場でレーザーカットし、持ち帰ることができる。
<Tinkering workshop>
60分のさらに発展的なプログラム。
❶BOX ART
レーザーカッターで切り出した箱を組み立て、その中に自分の好きなモノを立体的にレイアウト・コラージュしていくプログラム。工房で日々生まれる「端材」(材料の切れ端)を有効活用し、それらを「見立てる」(別の何かになぞらえる」)行為を軸に工作を行う。
❷手書きde迷路
黒ペンでマスをぬりつぶすように迷路を描き、それをデータ化、レーザーカットを行うことで、携帯ゲーム機のような迷路ガジェットができるプログラム。
組み立て時の複雑さなどは、専用のジグケースも作り、手順通りに作りたくなるようデザインしている。
❸3Dプリンターでコマづくり
ブザウザで使用できる3Dモデリングソフトを用いて、その場でコマを設計し、3Dプリンターでコマを出力するワークショップ。3Dプリンターは出力に時間がかかるため、短いワークショップにするのは難しく、時間内で3Dプリントの魅力が伝わるよう試行錯誤を行なった。